作業所職員として「障害者自立支援法」から「障害者総合支援法」を通じて感じたこと

                      広島・「障害者」解放を進める会  倉橋 孝則

 

 私は、広島で12年間「障害者」の作業所の職員として働いています。

 

 この作業所を利用している「障害者」は、13人で、企業から受けた梱包材の組み立てなどの軽作業や、アクセサリーなどの自主製品作りを日課として行なっています。職員は、軽作業のサポートや、納品、食事などの介護全般を行なっていますが、作業所の運営費の大部分を占める行政からの補助金が少なく、利用者の介護の量に対して職員が不足しており、十分な介護を行なえない場合があることや、作業所の広さは10坪程しかなく、休憩室も十分な広さをとれないことなどの問題を抱えています。

 

 政府は、2006年の「障害者自立支援法」に伴い、作業所を「地域活動支援センターⅢ型」、「生活介護」、「就労継続支援A・B型」等に分類し、労働が出来る「障害者」、労働が不可能な「障害者」へとさらに分けました。

 

 私の作業所は、「障害者自立支援法」の成立前までは、国からの指定を受けていない、いわゆる無認可の小規模作業所として自治体からの補助金を運営費に充て、運営していましたが、現在は、「地域活動支援センターⅢ型」へと移行して運営しています。

 

 政府は、「障害者自立支援法」による作業所の再編のために、無認可の小規模作業所への補助金の打ち切りを決定し、「地域活動支援センターⅢ型」への移行を強制しました。しかも「地域活動支援センターⅢ型」への移行の条件として5年間の運営実績や、10人以上の利用者数が必要であるなどの要件があり、この要件を満たさない作業所は「地域活動支援センターⅢ型」への移行は不可能で、補助金を打ち切られ、作業所独自で運営費を賄うか、どこかの作業所と統合するかしかなくなったのです。しかし、「地域活動支援センターⅢ型」に移行できたと言っても自治体からの補助金は、移行前と比べてもあまり変わりはなく、作業所の運営費不足、職員不足の解決にはなっていません。しかも、補助金の計算は、移行前は月単位での計算だったものが、日単位での計算となりました。「障害者」が作業所に来た日数によって決まり、休めばそれだけ給付費が少なくなり、運営も厳しくなる仕組みになっているのです。だから、私の作業所では、ついつい補助金のことを考えて、1日でも多く来てもらうために「障害者」の顔色を窺い、今までよりも必要以上の介護や身の回りの事を行うような職員も出てきています。

 

 「障害者自立支援法」によって政府が作業所に対して行なったのは、作業所の細分化と、作業所の淘汰です。

 

 作業所は、主に「特別支援学校」卒業後の大半の進路として位置づけられていますが、多くの作業所では工賃も低く、「障害者年金」と足しても作業所に通いながらの自立生活は困難な状況です。

 

 企業に就職できても厳しいノルマ(成果)を求められ、症状が悪化し、職場を休むようになり、最終的には首切りにあっている人もいます。しかも、就労する「障害者」への最低賃金すら保障しない企業も多数存在しています。政府も最低賃金法の特例を設けており、「障害者」の最低賃金以下の労働を容認しているのです。厚生労働省は、就職率が前年度と比べ16パーセントアップしたと言っていますが、「障害者」の最低賃金以下での雇用を容認するなど、「障害者」差別の構造はなんら変わっていません。

 

 政府は、「障害者」に対し、「出生前診断」や分断教育、卒業後の進路まで「健常者」と徹底的に分け、社会からの排除を徹底的に行っています。政府は、「障害者自立支援法」から「障害者総合支援法」へと法律を変えましたが、何ら変わりはありません。「障害者総合支援法」は「障害者」と「健常者」の〈共闘・共生〉を破壊し、ますます「障害者」と「健常者」を分断するものに他なりません。あらゆる「障害者」差別を撤廃し、「障害者総合支援法」を必ず撤廃しましょう。