「障害者」を生まれる前に選別して抹殺する「出生前診断」を許すな

                             大阪・「障害者」解放をめざす会

 2010年7月に、改悪「脳死―臓器移植法」が施行され、「脳死を一律に人の死とする」考え方に変更された。本人の意思が書面で残されていなくても、家族の承諾のみでの脳死―臓器移植が可能になった。すでに一五歳未満の子供からも行なわれている。価値ある命と価値なき命を選別する「脳死―臓器移植法」を粉砕しよう。


 昨年4月から、妊婦の血液から胎児の「染色体異常」を調べる「新型出生前診断(無侵襲的出生前遺伝学的検査NIPT)」が開始され、このうち羊水検査などで「異常」が確定した内の97パーセントが人工妊娠中絶をしていたと報道されている。

 

 「新型出生前診断」とは妊婦の血液に含まれるDNA断片を分析し、胎児の3種類の染色体の「異常」の有無を高い精度で判別できるといわれている検査。陰性判定では的中率が99パーセント以上とされる一方、陽性の場合、胎児がダウン症である可能性は、35歳以上の妊婦で80パーセント~95パーセントとされ、「異常」を確定するには羊水検査が必要になる。これまで行なわれてきた、妊婦の腹部に針を刺す羊水検査の検査方法と異なり、妊婦の負担が少なく流産の危険性がないとされる。そのため検査のハードルが低く、昨年4月から今年3月までに7740人が利用しており、今後は「新型出生前診断」が実施可能な施設が増えていくといわれている。

 

 新聞報道によると、昨年4月から1年間に利用した7740人の内、「陽性」と判定された妊婦が142人。羊水検査などで「異常」が確定したのは113人だった。このうち97パーセントにあたる110人が人工妊娠中絶をしていたとされる。羊水検査などで「異常」が確定した113人の内訳は、ダウン症が70人、心臓疾患などが43人だった。また、人工妊娠中絶した110人では、ダウン症が69人で、その他が41人だったとされている。一方、「新型出生前診断」で「陽性」と判定され、その後の確定診断を受けないまま中絶した妊婦が2人いたほか、1人は陽性との判断結果を知る前に中絶していたという。

 

 もともと「新型出生前診断」は、胎児がダウン症かどうかを「診断」するために21トリソミーという染色体を対象とする検査として開発された。後に、18トリソミー、13トリソミーが検査対象に追加されてたという経緯がある。そのため一部の医師からも「新型出生前診断と言うと聞こえはいいが、言い換えれば『ダウン症中絶検査法』だ。ダウン症だったら中絶したいといって検査を受ける」との批判も出ている。

 

 今年4月、日本産婦人科医会はダウン症児の出生が、過去15年で倍増しているとする推計を発表した。同調査によると、ダウン症を理由に中絶をしたとみられる数も1.9倍に増えていたという。日本産婦人科医会の調査では実数を出していないが、この推計を2011年の人口動態統計の出生数に当てはめると、ダウン症児は約2300人生まれるはずだったが、実際に生まれたのは約1500人となり、その差の約800人が中絶されたとみられる。高齢妊娠の増加に伴い、ダウン症の子を妊娠する人が増えていることが背景にあるというが、そのことをも口実に「出生前診断」推進の攻撃が強化されているのだ。

 

 優生思想を強化し、「障害者」を生まれる前に選別して抹殺する「出生前診断」を許してはならない。