日本の「障害者」政策の移動支援から見えてくるもの

大阪・「障害者」解放をめざす会 西山和行

 

 日本の「障害者」政策が措置制度(行政が、その職権で必要性を判断して、支援の種類や提供期間を決定する)から、2003年に支援費制度(介護別の介護事業所との契約制度)にかわり、「障害者自立支援法」(2005年)、「障害者総合支援法」(2013年)と法律の名称を変えながら9年が経ちました。この九年で、介護の商品化に貫かれた介護支援の制度が進められています。「障害者総合支援法」のもと、多くの「障害者」は、必要な介護時間・介護内容を享受することができていません。また、ヘルパー利用一つとっても自治体によっての差はありますが、「外泊でのヘルパー利用禁止」「県境を越える介護の禁止」「政治活動の禁止」などと多くの「都道府県」、市町村では「社会通念上」と明記して、各自の行政の価値観で禁止事項を作り「障害者」の外出の行動規制をしているのです。極端な例では東京北区です。移動支援事業の「平成25年度(2013年)」のガイドドラインでは「競輪場、競馬場、競艇場、パチンコ店、麻雀店、居酒屋などの飲酒を目的とした場所や、その他の公共の秩序に欠ける場所への外出」を禁止するとして「障害者」の外出の規制をしているのです。ではいつからこのような内容になり、「障害者」の行動を規制するようになったのだろうかと考え、資料を調べていきました。

 

 そのもとになったと思われる通達を見つけることができました。それは措置制度時代の「平成12年(2000年)」の7月に、「厚生省大臣官房障害保健福祉部長、身体障害者居宅生活支援事業の実施等について」、という、「都道府県知事、各 指定都市市長 殿、中核市市長」宛の通達のなかでの文面に書かれていました。「事業の対象者は、次のとおりとする。(中略)外出時の移動の介護等の便宜を供与する場合の対象者は、重度の視覚障害者及び脳性まひ者等全身性障害者であって、社会生活上必要不可欠な外出及び余暇活動等社会参加のための外出をするときにおいて、適当な付き添いを必要とする場合とする。なお、余暇活動等、社会参加のための外出には、通勤、営業活動等の経済活動に係る外出、通年かつ長期にわたる外出及び社会通念上本制度を適用することが適当ではない外出は含まれないものとし、原則として一日の範囲内で用務を終えることが可能な外出とする」と書かれている厚生省(当時)の通達であることわかりました。この内容が「障害者総合支援法」の今では多くの行政での基礎となり各行政の価値観でのガイドラインを作り、事業所への指導をおこない「障害者」の外出支援への行動規制をしているのです。自分が今暮らす大阪府枚方市の行政は今の段階では外出支援の規制はなく、「県境を越える介護」、「外泊」、「政治活動」も認めています。

 

 自分が一年半前に住んでいた。広島市でも枚方市と同じく今の段階での外出支援の規制はないと確認しています。しかし、いまだに多くの「都道府県」、市町村では外出支援の規制「『外泊でのヘルパー利用禁止』、『県境を越える介護の禁止』、『政治活動の禁止』」などの規制をしています。あきらかな「障害者」への行動規制であり差別です。行政は社会通念上と曖昧な概念を「障害者」にあてはめて、社会のなかで生きて行くことを阻害しています。絶対に許すことはできません。日本の「障害者」政策の移動支援から見えてくるものということで、と書いてきましたが、措置制度時代から「障害者総合支援法」をとうして一貫して国、行政はあくまでも行政の価値観でのガイドドインを作り、「障害者」への介護の基準や移動支援を作り、規制をしているのです。一部の行政が、行動規制をしていないのは「障害者」自らが行政の差別を見抜き声あげ、粘りづよく交渉をし、行政の差別を糾弾した結果です。今も全国では多く「障害者」が声をあげられなかったり、あきらめてしまう状況があります。だからこそ、差別糾弾闘争の地平を後退させることなく、闘っていかなければなりません。自分自身、全「障」共とともに「障害者」解放運動の前進と闘いを進めていきます。ともに闘っていきましょう。