全「障」共 第2回大会 基調

 

〈はじめに〉

 

 私たちは、昨年12月22日、全国「障害者」解放運動共闘会議を結成しました。全国障害者解放運動連絡会議(全障連)の歴史的地平を継承・発展させ、差別糾弾闘争の前進とさらなる大衆的拡大をかちとらなければなりません。

 「障害者」をとりまく現実はますます厳しさをましています。安倍極右政府は、7月に「集団的自衛権の行使」を容認する憲法解釈の変更を閣議決定しました。安倍極右政府は、朝鮮反革命戦争とファシズムの切迫とともに、戦時「障害者」差別―抹殺の攻撃を強めているのです。

 

 

〈「障害者」解放運動をめぐる情勢〉

 

 「障害者」の自立と解放をめざし、差別糾弾闘争で闘いぬいてきた全障連のみならず、運動体の少なからぬ部分が、「自立と社会参加」「完全参加と平等」を掲げて、体制内へと路線転換し、「政府との政策協議」「政策決定への参画」に展望を抱くに至っています。この路線転換は、1981年「国際障害者年」を契機とする「ノーマライゼーションの理念の普及」を受けて始まり、「介護保険制度」(2000年)、「支援費制度」(2003年)を契機とする介護の商品化の流れのなかで決定となりました。「障害者自立支援法」は、2006年に施行され、民主党主導の政府(2009~2012年)は、「障害者自立支援法を廃止する」と、期待と幻想を最大限に煽り、新「法」や政策決定の過程に多くの「障害者」団体を取り込みました。多くの「障害者」団体が参加した「障がい者制度改革推進会議」の「総合福祉部会」が打ち出した「障害程度区分に基づかず、本人の意思が最大限尊重する」などの「骨格提言」のほとんどの内容は無視され、「障害者総合支援法」は、「障害者自立支援法」を一部「見直し」ただけのものであり介護の商品化が貫かれたものになりました。

 

 介護の商品化とは、介護を「福祉サービス」という名の商品とし、介護に資本の論理を貫徹させることによって、〈共闘・共生〉を根底から破壊するものに他ありません。しかも厚生労働省は、将来的には「自立支援給付制度」の「介護保険制度」への統合まで狙っています。狙いは、介護のさらなる切り捨てと「障害者」からの介護費用の搾取強化です。

 

 これを批判しえぬ多くの運動体の体制内化が進みました。2009年に内閣府に設置した「障がい者制度改革推進会議」は、「障害者総合支援法」(2012年)が成立するとともに廃止され、同年「障害者政策委員会」となりました。会議は、「障害者差別解消法(障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律)」の制定を進めるための論議に多くの時間をついやしてきました。「法」は、2013年6月に国会で成立しました。2年後の2016年には施行していくというスケジュールが「障害者政策委員会」のホームページに載っています。「障害者差別解消法」は、差別糾弾闘争を非合法化しようとするものです。

 

 「心神喪失者等医療観察法」は、「犯罪行為」の原因を「心神喪失状態」などを引き起こした「精神障害」と規定しています。そして、「犯罪を行なった際の精神障害再発」があるから、特別な施設(「保安処分施設」)に隔離・拘禁するというものです。明らかな「精神障害者」差別法です。また、この「法」は、「医療法」ではなく、司法―国家権力に大きな権限を与える治安目的の「法」です。司法―国家権力が恣意的に、科学的根拠のない「再犯のおそれ」に基づいて「予防拘禁」できる点において、紛れもない「保安処分」です。「心神喪失者等医療観察法」施行九年で保安処分施設の数は今年の6月末で、「指定入院医療機関」30ヵ所(791床)、「指定通院医療機関」3054ヵ所にもなっています。

 

 昨年、改悪「精神保険福祉法」が施行されました。改悪された内容は、「精神障害者」の管理体制を一層強化し、地域社会からの排除を進めようとするものです。改悪「法」の中では「良質かつ適切な精神障害者に対する医療の提供を確保するための方針」の制定が掲げられ、厚生労働省内に検討会が設置され、今年7月に「病棟転換型住居系施設」についての報告書がまとめられました。「病棟転換型住居系施設」とは精神科病棟の一部をグループホームなどに転換して「精神障害者」や「認知症」患者の「住まい」と見なすことを認めるというものです。「地域移行の推進」という内容で進めようとしています。「精神障害者」を死ぬまで精神病院の敷地内から出さないということであり、また、これまでは「医療保険入院」の手続きの要件について、「保護者の同意」が規定されていましたが、「法」の改悪によって「保護者制度」が廃止され、同意の対象者が拡大し、行政の判断でも「入院」が安易にされてしまうのです。本人の意思が無視されることについては一切「法」には手をくわえないままに「医療保護入院」は改悪されたのです。

 

 「優生思想」にもとづく「障害者」抹殺攻撃が強められています。2010年に改悪「脳死‐臓器移植法」が全面的に施行されました。「脳死を一律に人がない死とする」考え方に変更され、本人の意思の確認がされなくとも家族の承認のみで脳死―臓器移植が可能となり、15歳未満の子どもからの脳死―臓器移植は今年の7月に5例目がおこなわれています。また、「尊厳死法」は来年にも国会での上程が目論まれています。「脳死―臓器移植法」と「尊厳死法」案は、価値ある命と価値なき命を選別しようとするものに他なりません。昨年の四月から、妊婦の血液からダウン症、 心臓疾患の「染色体異常」を調べる 「新型出生前診断」が開始されました。新聞報道(日本経済新聞2014年6月27日)では、昨年4月の開始からの一年間に7740人のうちが陽性と判断された142人。そのうち、妊婦羊水検査などで異常が確定した113人中110人が中絶をしていたことが報道されました。優生思想を強化し、「障害者」を生まれる前から選別して抹殺しようとするものです。      

 

 

〈この一年間の総括〉

 

  昨年12月22日の全「障」共結成大会の結成宣言の中で、「介護の商品化は、介護に資本の論理を貫徹させることによって、共闘・共生を根底から破壊するものに他ならない。これを批判しえぬ多くの運動体の体制内化と運動的衰退が進み、全障連もまた、その生命力を失うに至った。「障害者」をとりまく現実は厳しさをましている。戦争とファシズムの時代の切迫とともに、優生思想、社会防衛思想が蔓延し、「障害者」への隔離・収容・抹殺の攻撃はますます強まっている。闘いの課題は山積みしている。体制内運動を突き破る新たな運動と組織の創出が急務である。いかなる困難な状況のもとでも、差別糾弾闘争を闘い、「障害者」の自立と解放の道を切り拓いていく、分断を突破し、労働者階級との階級的共同闘争を推進していく、資本主義社会の変革-普遍的人間解放の実現をとおした「障害者」解放を展望していく」と宣言し、結成大会をかちとりました。結成大会以降の全「障」共の闘いの取り組みとしては、4月1日には、最初の取り組みとして、「障害者総合支援法」施行1ヵ年糾弾闘争を闘い抜きました。7月6日には、「心神喪失者等医療観察法」施行九ヵ年糾弾闘争を闘いました。7月20日には、入院患者差別・虐待30ヵ年糾弾―宇都宮病院糾弾闘争を闘いぬいてきました。また、全「障」共の全国機関誌を3月20日に「全『障』共ニュース」第1号として発行し、11月20日の第4号まで発行してきました。全国幹事会の会議も定例的に進めています。しかし、全国的な闘いをかちとっている一方で、地区の運動や闘いの取り組みができていないというのも現状です。

 

 その現状を変えていくには一人一人の幹事自らが、「障害者」解放運動を進める一人としての自覚と責任をもち、各地域での社会矛盾と闘う労働者、学生、被差別大衆・人民との積極的関係を作り、相互変革の上に連帯を築き、社会変革のために、自らが先頭にたち「障害者」解放運動を進めて行かなければなりません。

 

 総括の最後に、役員であり、会計をしていた黒田について報告しなければならないことがあります。黒田は、さる集会において介護で一緒に参加していた施設「障害者」が翌日、体調が悪くなったことを集会参加者が声をあらげたことが原因だと決めつけ、集会参加者にたいして、「『障害者』虐待だ」「施設『障害者』が『パニック障害』で入院した」などといい、声をあらげた当事者に自己批判を要求し自己批判なき場合は全「障」共を離脱するとまで宣言しました。その後、施設「障害者」に面談し、事情を聞いたところ、「たいした問題ではない」「入院したのは『パニック障害』ではなく、まったく別の病気で入院していた」と言っています。黒田は「介護をしてやるかわりに政治闘争に参加させる」なる「障害者」解放運動ならざる「障害者」運動観にもとづく政治手法と思われることをしていたのです。黒田は、その後連絡を切断し、全「障」共からの離脱を追認せざるをえない状態となっています。現在、会計が空白となり、第2回大会までは事務局長の西山が会計を兼任しています。黒田のことは役員、幹事が痛苦にとらえかえし、互いの「障害者」解放運動の方針や考え方を議論し深め運動の前進をかちとっていかなければなりません。

 

 

〈二〇一五年「障害者」解放運動の方針〉

 

 分断を突破して、「障害」の「程度」や「種別」を超えた「障害者」の団結を形成し、「障害」からの解放ではなく差別からの解放をめざして闘うことが必要です。〈共闘・共生〉を強化し、労働者階級との階級的共同闘争を推進し、資本主義社会の変革―普遍的人間解放の実現をとおした「障害者」解放を展望していく組織と運動を確立することが今、全「障」共に強く問われています。

 

 介護の商品化の「支援費制度」の下では、多くの「障害者」は、必要な介護時間・介護内容を受けることができません。ヘルパー利用一つとっても自治体によって差はありますが、「外泊でのヘルパー利用禁止」、「政治活動のための利用禁止」などの様々な制約が課せられています。「障害者」が自立と解放を実現するために不可欠な活動を行うことが困難なのです。「支援費制度」は、介護者が「資格」を持っていようが持ってなかろうが介護内容が何であろうが、介護時間分が「給付」される従来の「措置制度」からの明白な改悪です。「障害者総合支援法」撤廃をかちとり、介護の商品化を粉砕しよう。「心神喪失者等医療観察法」撤廃をかちとり、保安処分施設の建設阻止―解体へ。保安処分新設を阻止しよう。「精神保険福祉法」撤廃をかちとり、「病棟転換型住居系施設」阻止しよう。「脳死―臓器移植法」撤廃をかちとろう。来年にも上程が目論まれている「尊厳死法」 案を許さず、阻止しよう。「安楽死・尊厳死」法制化を阻止しよう。「着床前診断」に反対し、生まれる前から選別して抹殺する「新型出生前診断」を許してはならない。「母体保護法」撤廃をかちとろう。優生思想と対決し、優生政策を粉砕しよう。分離・別学教育体制を粉砕しよう。差別糾弾闘争を非合法化するような「障害者差別禁止法」制定要求を踏み越えて闘おう。戦争とファシズムに反対し闘おう。

 

  すべての闘う「障害者」は全国「障害者」解放運動共闘会議に結集しよう。第2回大会の成功をかちとろう。

 

 

〈当面の課題〉

 

  1. 「障害者総合支援法」撤廃をかちとり介護の商品化を粉砕しよう。
  2. 「心神喪失者等医療観察法」撤廃をかちとり、保安処分施設の建設阻止―解体へ。保安処分新設阻止しよう。「精神保険福祉法」撤廃をかちとり、「病棟転換型住居系施設」阻止しよう。
  3. 「脳死―臓器移植法」撤廃をかちとろう。「安楽死・尊厳死」法制化を阻止しよう。「着床前診断」・「新型出生前診断」反対。「母体保護法」撤廃。優生思想と対決し、優生政策を粉砕しよう。
  4. 分離・別学教育体制を粉砕しよう。
  5. 差別糾弾闘争を非合法化する「障害者差別禁止法」制定要求を踏み越えて闘おう。
  6. 戦争とファシズムに反対し闘おう。

 

 

〈スローガン〉

 

・「障害者」の〈自立と解放〉をかちとるぞ!

・差別糾弾闘争を闘うぞ!

・〈共闘・共生〉で闘うぞ!

・「障害者」解放まで闘うぞ!

・全「障」共は闘うぞ!